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日本の建築文化のあり方

今日は私が6年前に新聞へ投稿した記事をご紹介します。

52歳の私が50歳を境に、刺し身にビールが合わなくなった。
刺し身には日本酒が合うように、土地の食べ物によって酒が生まれる。
文化は、風土に合わせた土地の人と職人の努力による傑作である。

私は「衣・食・住」のうち、建築を通じて「住」の文化にかかわりながら、
現代の日本人に、民族や風土によって培われた伝統や文化観に対する希薄さを感じる。

第一次世界大戦の後、戦火の激しかった国々では、大量の住宅や
社会施設の復旧に急を要したが、経済的・技術的にも多くの問題を抱えていた。

そんな時代背景の元に生まれた学校が、ドイツのバウハウスである。
そこでは、合理主義の理念に基づいて材料や機能の分析などの基礎研究を行い、
工業生産を展開して工芸や建築の量産化を図った。
その時代、世界的にも合理的な考えを軸に、風土や民族の相違を超えて
世界共通の材料や技術を生み出した業績は、評価するものである。

それから80年、欧州においては合理主義と独自の文化とのバランスが
うまく取れているように思われる。
しかし日本においては第二次世界大戦の敗北から57年、戦火からも復興し、
国民一人当たりのGDP(国内総生産)が世界一まで上り詰め、
物質的には豊かになったにもかかわらず、バランスの取れた社会と言えるだろうか。

日本らしさは合理主義のみではなく、
風土や民族に沿った伝統、文化、歴史を重んじる国ではなかろうか。

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